恵比寿・エコー劇場で上演されている舞台『美女と魔物のバッティングセンター』観劇して参りました。
こちら木下半太さん原作の小説を舞台化したもの。
今回観劇するにあたって原作『美女と魔物のバッティングセンター』を読んでから観劇。
原作を踏まえた上での舞台観劇感想です。舞台ネタバレ、小説ネタバレ含みます。
感想
舞台は舞台で面白かったです。
ただ、原作を読んでしまったがために「何か違うな……」と思ってしまったのも事実。
原作の最後のどんでん返しで泣きながら読みましたが、今回舞台オリジナル設定の回想で泣きかけたくらいです。
客層
今回開演前思ったのが、女性のお客さんがとても多いということ。
私が観劇した回では、恵比寿・エコー劇場の後ろ三列が関係者席でとられていたように思います。
そして私の席はというと、関係者でも何でもなく一ファンなのですが何故か関係者席での観劇だったんですね。
会場後ろ、客席全体を見れる位置での観劇でしたが、女性客がほぼ10割でした。
物販で生写真も売られていましたが、フライヤーにも載っている松田くんと神永くんのみの販売であとの出演者さんが売られてなかったんですよね。
松田くん、神永くんのファン向けの舞台になってしまっているのかな……と。
原作『美女と魔物のバッティングセンター』との差
原作では貧乏神がドレッドの男性でしたが、今回は女性の西丸優子さんが演じていたり。
ヴァンパイアハンター坂東が関西弁のおばちゃんでなく、男性の藤尾姦太郎さんが演じていたり。
後述しますが先輩ホストの聖矢と主人公の吸血鬼タケシとの関係性にも相違があり、全く原作通り、というわけではありませんでした。
が、舞台という短い時間で完結させるためには難しいところですよね……。
バッティングセンター
原作中、「バッティングセンター」、と一言で表しても、新宿歌舞伎町から始まり、三軒茶屋、明治神宮、銀座とその場その場でのバッティングセンターの物語がありますが、それに関しては一切触れられていませんでした。
銀座バッティングセンターの神様の件は一切ありません。
バッティングセンターを舞台とした、本でなら読み込めるキャラクターひとりひとりの抱えている問題や闇が少し足りない印象です。
貧乏神
今回西丸優子さんの演じた貧乏神。原作での貧乏神は男性というのは先述した通りです。
不幸の連鎖を引き起こす、というのは変わらないですが、その能力の引き起こし方が全く違いました。
今回の西丸さんの貧乏神は「自分で望んでいなくても勝手に周りが不幸になってしまう」、自分の意思は全く関係なく不幸を連れてきてしまう。
彼女自身も周りを不幸にするくらいだったら何処にも出かけたくない!とタケシに訴えていました。
そして原作の貧乏神。
原作の貧乏神は「自分が流行って欲しい」と願った場所に不幸の連鎖を呼んでしまう、というもの。
この原作の貧乏神設定が凄く自分の中で思うところがあったので、その設定をどこにでもあるようなものに改編されていたのが少し残念でした。
ホスト聖矢役、神永くんの待遇
フライヤー(チラシ)に今回三人載っていて、初めて見たときから違和感を感じていました。
主人公タケシ役の松田凌くん、ヒロイン雪美役の小山まりあさん、そしてタケシの先輩ホスト、聖矢役の神永くん。
多分原作を読んだ方は「何で聖矢?」と思われたのではないでしょうか。
原作だけでメイン3人を選ぶとしたら、タケシ、雪美、それと土屋になると私は思っていました。
フライヤーにも載っている神永くん、ホスト聖矢。
原作では主人公タケシと仲の良い先輩ホスト、一話完結の物語の中の体感5分くらいに少し絡んでくるくらいの扱いでしたが、今回ここぞというときには聖矢がいる、くらいの待遇でした。
貧乏神との対決、原作では運の無い役者である藤森がキーパーソンでしたが、今回の舞台では藤森の話であった三軒茶屋のバッティングセンターの話を丸々省き、代わりのキーパーソンとして神永くん演じる聖矢が抜擢されました。
ヴァンパイアハンター坂東との対決においても、タケシのピンチにたまたま登場して窮地を救う聖矢。
そして物語では事件現場にただ居合わせたタケシとは何の関係もないホスト、という間柄ではなく、タケシがいじめられていたときに助けてくれる、親友のような同級生。
神永くん目当てで観に来ているファンには嬉しい待遇ではありましたが、原作が好きだと少しその聖矢推しがあからさますぎてもやもやしてしまいました。
何より土屋の扱いがぞんざい!
原作読んでない人からすると土屋がただの変なおじさんにしか見えなかったのではないでしょうか。
土屋との出会い、ちょっとしたところでのやり取りなどが省かれていたり、聖矢との思い出に改編されていたのが不満点。
神永くんのことは後ほど書きますが、聖矢に関していえば役者さんの問題ではなく、物語の構成として自分の中で気持ちよくないなという感想です。
感想まとめ
大人の事情というか、そういうところはありましたが、舞台だけで言えば面白い舞台だったとは思います。
出演者の皆様ひとりひとりの個性が強くて、心に残ってしまう感じ。
ただ、原作が好き、という方が観に行くのは少し違うかな、と思ってしまうかもしれません。
女性客が多いことからも察してもらえるように、原作ではストーリーに都度都度で絡んでくる程度だったホストがメイン級の扱いを受けていますし、吸血鬼も女性ファン向けサービスでふりふりのメイド服着ますし(すももちゃん可愛かったですけれども)。
原作ありきで舞台化するとなると演出が変わるのは当然ですが、その構成が私的には惜しいかなという感想。
原作を先に読んでいきましたが、舞台後に原作を読んだほうが気持ちよく自分の中でまとめられるかなと思いました。
気になりキャスト
紹介は2人しかしてませんが、会場も大きくないのでマイクを使うことなく全員生声。
叫ぶシーンなどが多くハラハラしましたが、凄くパワフルな舞台!
そしてあまり触れてはいませんが、主役のタケシ役、松田凌くんが私の中での理想のタケシでした。
雪美役小山まりあさん
『美女と魔物のバッティングセンター』、小山さん目当てです。
今回原作を読んでからの観劇でしたが、雪美嬢が小山まりあさんのイメージにぴったり。
原作の表紙絵の美女、気が強そうなお姉様という雰囲気ですが、いざ読んでみるとどこか幼いというか、無邪気な印象。
他にも過去小山さん出演の舞台を観劇しましたが、そのイメージと今回の役のイメージが当てはまってて、原作も小山さんのイメージで読了しました。
赤いドレスがよく似合っていました!
立ち姿もモデルをやられているからかすごく姿勢が良くて様になっていましたし、可愛いのに顔芸の力技w
雪女で相手を凍らせる場面の自信満々な表情や手の動きに見入ってしまいました。
「タケシいってこーいw」ととりあえず無茶振りするのも原作の雪美嬢そのまま。
しかし原作と違う関係性、同級生のタケシに雪美から告白する「付き合ってください」の言い方が何処にでもいるような普通の女の子のようで可愛らしかったです。
4月に小山さん客演する、劇団鋼鉄村松参加の「ガチゲキ!!」、観に行きたいです。
「家族がやたら恋愛に理解のあるロミオとジュリエット」、気になりますもの!笑
聖矢役神永圭佑くん
テニミュで幸村精市役をやられている神永くん。
今回テニミュ以外での神永くんを観るのは初めてだったのですが、全く別の役柄で新鮮でした。
幸村というと、個人的にはパジャマ姿が印象的ですが、チームメイトからも頼りにされる、威厳のあるプレーヤー。
しかし今回の神永くんは少しバカなホストという役柄でした。「ベッコベコにすんぞ」が口癖です。
客席を巻き込んだ煽りの場面もあり、少し柄の悪い役ではありましたが、安心してみれました。
いじめられていたタケシを助ける回想シーン。
転校生雪美に一目惚れしたタケシにアドバイス、手伝うシーン(雪美の取り巻きの女の子をワンパンで沈めるシーンには笑いました)。
そして25日のクリスマス、例の事件のシーン。
自分の中で神永くんのイメージをひとつに絞らないで新しい神永くんをみれた舞台でした。
今後、他の舞台に出演されるのを是非観に行きたいです。
「復讐でしか、不幸から逃げられない」
一番心に残ったのはこの台詞。
タケシが復讐屋の意味を、他人の不幸の復讐を代行する復讐屋をする雪美嬢に問うたとき、雪美嬢が言った台詞です。
例えば自転車のサドルが盗まれたとする。
それを盗んだ犯人から取り返そうとするのか、それとも他の関係ない人のサドルを同じように盗むのか。
不幸にも外的要因の不幸、内的要因の不幸など色々ありますが、外的要因、他者要因で引き起こされた不幸に対してどのように対処するのか。
持論にはなりますが、不幸なとき、更に言うと悲しいときには力が出にくいと思うんですよね。
悲しい、ツライ、何もしたくない。
そういった心が弱っているときにどうやって立ち向かうか。
今回の舞台での問いに対する答え、それが「復讐」なのかな、と。
「復讐」をしよう!となったときには何かしらの行動を起こすと思います。その行動より、行動力を自ら出すということに意味があるのではないでしょうか。
原動力が「復讐」というのは物騒ではありますが、悲しんでばかりでは前に進めない。
前に進むために、不幸に立ち向かうパワーに「復讐」を使うのは、同意は出来ないものの、見習いたい強さではあると感じました。
公演概要
舞台『美女と魔物のバッティングセンター』
2014年3月25日(火)~2014年3月30日(日)@東京:恵比寿・エコー劇場
スタッフ
原案・原作:木下半太
劇作・脚本・演出:モラル
キャスト
松田凌 / 神永圭佑 / 小山まりあ / 西丸優子 / 山口大地 / 藤尾姦太郎 / 満間昂平 / 萩原達郎 / 辻貴大 / 石澤希代子 / 日比野線 / 吉河依瑠 / 阿部和樹 / 道又菜津子
ストーリー
劇団「犬と串」の主宰・モラルが木下半太原作「美女と魔物のバッティングセンター」を作・演出!!
吸血鬼のホストや復讐屋の雪女、へタレなホストや貧乏神…。
奇想天外な登場人物たちと、「モラル色」なナンセンスコメディ舞台の結末は、木下半太氏の真骨頂!想像絶する涙ラスト!!
新しいエンターテインメント舞台をおたのしみに!
(公式サイトより引用)
公演公式サイトはこちら