現在紀伊國屋サザンシアター7階で上演されているポンコツバロンプロジェクト『オズからの招待状』、観劇して参りました。
22日土曜日の昼公演はDVD収録回とのことでカメラも入っていました。
個人的主観とレポート感想をまとめます。
※こちら内容ネタバレ含みます。ご注意ください!
感想
卒業間近の高校生と、それを振り返る20年後の大人たちの物語。
教室が舞台になって、卒業間近の4人と、20年後に一緒に卒業式をする約束をしていて「招待状」に呼び出された4人が当時を振り返りながら話が進みます。
自分が高校生だったら、と、自分が大人になって振り返ったら、で思うところが違いますね。
「願えば叶う」「前しか見ねぇ」
ユウタはこの言葉をよく口にしますが、私からすると若いなぁと思ってしまいます。
でも私自身が高校生だったら恥ずかしげもなく「願えば叶うよ!」と言えていたんだろうなぁと。
それが大人になるってことでしょうか。
やっぱり視点が変わるし、考え方も変わります。それを実感する舞台でもありました。
この舞台のように過去の自分に実際に会って、振り返ることはできません。
過去の悩んでいる自分に向けて、道を示すこともできませんし、慰めてあげることもできません。
過去の自分は変えられなくても、未来の自分に恥ずかしくない生き方をしなければいけないなと。
舞台感想ではありませんが、そういうことを考えさせられてしまいました。
西島くんが「言うねー」という台詞で例の滝萩之介を思い出しました。
兄に「成り代わった」ユウタ
主人公のユウタには尊敬する兄がいました。
兄は卒業式の直前で事故死してしまいます。
それにより、「一生越えられない壁になった」兄の存在。
それから、ユウタは元々の性格をがらりと変えて、兄に近づこうと、兄を越えようと兄と同じ言葉遣い、振る舞いを始めます。
卒業式へは先生を殴って出禁になりますが、それもユウタが望んだこと。
ユウタは兄の卒業式後の人生が分かりません。だって兄はもう死んでしまっている。先がないんです。
兄に成り代わっていたことを3人から指摘され、今後の自分の生き方がわからなくなってしまうユウタ。
一方、20年後のユウタは高校時代のことを断片的にしか覚えていません。
20年後の友人たちが、20年後のユウタに、高校生の頃のユウタの出来事を思い出させるように話します。
それを聞いた20年後ユウタは、20年前のユウタを追いかけ、屋上で高校生のユウタ、20年後のユウタが邂逅します。
全部が繋がって、これからが過去の自分の道になることを決意した20年後ユウタ。
高校生ユウタはというと、俺の気持ちなんてわからない、と最初心の奥では友達を信用していなかったユウタが、大人ユウタと話したことで友達の大切さに気付きます。
その後すぐに広田先生がいちゃもんをつけにやってくるのですが、ユウタの友人3人はユウタを守るために戦います。
俺がユウタを追い詰めたから、という理由で先陣をきっていったトミー役味方くんの熱演。
「こいつを独りにしたくないんです」という友達3人は、一緒に卒業式出禁になって、代わりに20年後に卒業式を行うことを誓います。
4人の高校生と4人の大人。
それぞれ時間軸が違うのでほとんど直接会話するような絡みがありませんでしたが、最後雨が上がったあと、会話するシーンがありました。
劇中の「みんなで進め」「残りの人生今日が最初の日」、を再度強調し、心のモヤモヤが晴れたように爽やかにまとめられる感じ。
「こいつらと、またきます、」というユウタに、「二度とくんな」と広田先生。
このやり取りは20年後ユウタと広田先生の間でも同じく行われました。
全体感想
気持ちよく終わりました。
話自体もわかりやすくはありましたし、ダンスや話から逸れない程度の笑いの要素も入れてきていたので最後まで集中して観ることができました。
特に、吹っ切れたユウタの「願えば叶う」、が安心できる。
最後までモヤモヤすることなく、キャラクターひとりひとりが夫々の問題を解決したり、悪いイメージを払拭して全てのキャラクターを愛せるように観終われました。
これからも続いていく楽しい未来を示唆され、この舞台の世界が幸せに続いていくことを思わせてくれます。
気になりキャスト
そもそも『オズからの招待状』を観に行ったのが、テニミュキャストが多く出ているからという理由。
中でも赤澤燈くんが出ているから行こうかなとその点で決断。
一回しか見ていないので全体は見たつもりではありますが、中でも気になったキャストさん数名ご紹介致します。
高校生ユウタ役赤澤燈くん
今回主演でしたが一番熱演されてました。
ダンスシーンも相変わらずのキレでしたし、バスケットボールを使ってダンスするシーンもBGMとぴったりでカッコいい!
キャラクター的な話ですと、今回、高校生4人の中では一番不安定なキャラだったように思います。
テンション高いときは本当に高いですし、悩むときには思い詰め、怒りも顕わにする。
だからこそ、その時々の演技がすごく新鮮で観ているほうも心を動かされやすかったのかな、と。
特に高校生ユウタと20年後ユウタが屋上で会話するシーン。
高校生ユウタは目の前にいるのが自分の20年後であることに気がつかず、死んでしまった兄だと思いこみます。
「にいちゃん!」
と助けを求めて悲痛に叫ぶ場面や、20年後ユウタから「お前は独りじゃない」と声を掛けられ泣き崩れるシーンにつられて泣いてしまいました。
初めての座長ということでとても緊張されていたんじゃないかな……!
高校生4人組はテニミュで共演したこともあり、仲が良かったとは思いますが、対して大人組+先生はベテランさんばかりですものね……!
でも高校生組も負けないほどの熱演でしたし、燈くんは舞台を引っ張るいい座長だったと思います。
他の方の感想を色々見ましたが、「泣いた」、「感動した」という言葉が多かったですし、佳境の大人ユウタと高校生ユウタの会話シーンでは客席からすすり泣く声が多く聞こえました。
大人タケ役佐野大樹さん
タケの高校時代は西島顕人くんが演じています。
独特の世界観を持っていて、他から「メルヘン」と言われることもあるタケ。
ところどころで笑いの爆弾を落としてくるのは大体佐野さんでした。
味方くん、菊地さんが並んだところで菊池さんに向かって、
「背、縮んだ?」
味方くんと菊地さんだったら味方くんの方が背が大きいから……!仕方ない……!
客席が「あ、」と気付くけれどもどうにもならない問題(役者の身長差)に流さず突っ込みをいれるのがタケなんですね。
他にも広田先生に頼み込むところも笑い挟んできましたし(「先生!」と言っていたのに急に「教頭!」と持ち上げたり。辻さんと息ぴったり)。
スパイスというか異色ではあったかと思います。
佐野大樹さん、今回初めて観劇したのではなく、WBB vol.4 『川崎ガリバー』公演以来でした。
その時もすごく個性的な役柄ですごく印象に残っていたので、今回も期待していましたが期待通りでした。
このテンション、何かに似ていると思ったら燈くんが出ていたときに観に行った『男子ing!!』のツヨシに似てるんだ……
広田先生(ワロタ)役辻修さん
とても怖い先生、理不尽な先生。嫌な先生。
でも生徒のことを考えてくれている先生。
「招待状」を出して、4人のことを引き合わせた張本人でもあります。
印象的だったのは、劇中2回出てきたこの言葉。
「人生の壁は何事も二択でできている。
したいけど、できない。できるけど、したくない。」
正直、この言葉を「あぁ、なるほどなぁ」と思えるほどに自分の中に落とし込めません。難しい言葉だと思います。
時間が経てばこの言葉を実感できるのかなぁ、と。
また、辻さん自身も動きに特徴があり、思わず目で追ってしまいました。
後の役者が2人一組でひとりの人物を演じているのに、辻さんだけ広田先生をひとりで演じてらっしゃって、そういう点でも印象に残りました。
「嫌な人」との向き合い方
今回一番考えさせられたのは、広田先生の振る舞い。
今回広田先生は生徒から「ワロタ(w)」と陰で言われ、尊敬されるような存在ではありませんでした。
すぐに怒鳴ってくるような、生徒をバカにしているような言動をする嫌な先生。
でもそれは送り出す生徒たちがこれから社会人になったときを考えて、社会の理不尽に耐えられるように、とわざと振舞っていた行動でもありました。
私自身、学生のときも、そして今現在でも、言葉を言葉通りに受け取ることしかきっと出来てません。
でも後々振り返ってみると何か意図があったのかなぁ、と考えさせられます。
高校・中学のときには嫌な先生って、やっぱり嫌な先生としか捉えられていませんでしたが、その「嫌だ」と思う行動も生徒のことを思ってのものだったかもしれない。
今回の『オズからの招待状』で、20年後に集まって卒業式をする、と4人が言ったことを覚えていたのは先生だけ。
当人たちは招待状がくるまでそんな約束をしたことも覚えていませんでした。
4人が集まった際に卒業証書をしっかりと渡したのも先生。
本当にクソガキと憎く思っていたら当時受け取られなかった卒業証書はとっくに捨ててしまっていたでしょうし、そもそも招待状を出していなかったでしょう。
先生といわず、今置かれている状況でも置き換えて考えられると思います。
社会人になったら、それこそ理不尽なことってたくさんあると思うんですよね。
嫌な上司、嫌なお客さん等々………
言葉通りに受け取ってイラつきを起こすのは簡単ですが、もしかしたら言葉の裏の感情や意図が隠されているかもしれません。
勿論、全ての理不尽が意図あって言われることはないでしょう。本当に自分と価値観が合わなくて理解できなかったりも少なからずありますし。
しかし、後になって自分で振り返ってみて、もしくは後になって理不尽を強いてきた張本人と話をして、その時には分からなかった意図が掴めるかもしれません。
言われているそのときには言葉以上のことはわからなかったり、納得できないこともあります。
でも自分に向けられる全ての理不尽が、何も自分にもたらさないことはないんだなぁと。
何か実になっていると自覚できるときもできないときもあります。
人生理不尽ですけど、理不尽の全てが敵じゃない。
『オズからの招待状』、私の個人的な感想になりましたが、生きる上での新しい見方を少しだけでも発見できたような気がします。
公演概要
PONKOTSU-BARON project 『オズからの招待状』
2014年3月19日(水)~23日(日)@東京:紀伊國屋サザンシアター
スタッフ
演出:伊藤マサミ(bpm/進戯団 夢命クラシックス)
脚本:伊勢直弘
キャスト
赤澤 燈 / 西島顕人 / 味方良介 / 安川純平(50音順) /
永山たかし / 佐野大樹 / 辻 修 / 菊地 創 / 楠田敏之
ストーリー
桜咲く3月―。
卒業間近のとある高校の教室。そこに集まる4人の卒業生。
20年振りの再会…。
他人に無関心だったアイツ―。物事を深く考えられなかったアイツ―。
勢いはあるけど小心者だったアイツ―。
そして、前しか見ていなかったアイツ…。
4人がそれぞれの過去を思い出しながら記憶を遡っていく。
やがて、その先に忘れかけていた『約束』と、置き去りにされた『真実』が浮かび上がる。
過去と現在が交差しながら、彼らが導かれた場所とは…!?
(公式サイトより引用)
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