2015年、ガラスの仮面劇場「女海賊ビアンカ」の初日観劇して参りました!
台風が接近して天気大荒れの初日……!すごい、「忘れられた荒野」みたい……!
紫のバラの人……じゃなくて速水真澄様も約7ヶ月ぶりにツイートされていてテンションが上がったところでの観劇。
以下、感想とネタバレです。
それにしても真澄様の中の人ノリノリですね!笑
諸君、久しいな…。本日は、渋谷のアイア2.5シアタートーキョーで「女海賊ビアンカ」の初日である…。そして、嵐の大雨である…。初日…嵐…大雨…これは出番だな…!「ぼくは開演時間をまちがえましたか?」…台詞は完璧である…! http://t.co/zfW8bPzl9c
— 速水真澄 公式ツイッター (@masumi_hayami) 2015, 9月 9
感想
2013年秋に上演された劇団つきかげvol.0「女海賊ビアンカ」も観に行きましたがそれよりもパワーアップしているなと!演出がとても好み!
発光手袋を使った手の演出、同じ演出でも久し振りの「女海賊ビアンカ」からか新鮮な気持ちと懐かしい気持ちで観劇できました。
アンサンブルの方々から順々に手渡されていくゴンドラや毒杯、一致団結でこの作品を作っていくような心持を感じられ、こちらも好きな演出です。
ガラスの仮面らしさ
“美内すずえ×ガラスの仮面劇場”と銘打っておりますが、そもそも観劇される皆様ガラスの仮面ご存知なんですかね……?
今回上演された「女海賊ビアンカ」は、主人公北島マヤが芸能界をスキャンダルで失脚し、周りの協力をほとんど得られない中で道を切り開くために高校の文化祭の出し物として体育館倉庫で上演された一人劇です。
今作、勿論一人芝居ではないですし、運河を渡るゴンドラを跳び箱で表現しておりません。
「女海賊ビアンカ」、きちんと興行作品としてリメイクしながらも、ガラスの仮面“らしさ”を所々で感じ取ることが出来ました。
投影技法
原作でのロレンツォ登場シーン。マヤ自身の投影で表現しておりました。
体育館倉庫で使われた(であろう)投影技法が今作中節々で使用されます。
白馬の王子様を待ち焦がれるビアンカが白馬を慈しむ場面は小さな木馬の影が用いられました。
また、シルバーの貴族時代の過去。上手と下手のカーテン越しにどろどろの貴族の権力争いが描かれます。
影だからこそ小さなものでも大きく見せることが可能ですし、顔が映らないからこそ観客の想像力をかきたてます。
カーテン越しですのでアンサンブルの方々の出番も増やせますしね!
他劇中劇を彷彿とさせる演出
すごくガラスの仮面らしさを感じたのは、冒頭の海賊ニコルが貴族ビアンカに変化するシーン。
まるで人形のように、と侍女に着替えさせられる様子が本当に人形のような関節の動きで……!
ガラスの仮面ファンからすると「石の微笑」を思い出された方が多いのではないでしょうか!私この時点ですごくテンション上がりました!
作品が素晴らしいだけに浮き彫りになる会場の問題
演者、脚本、音響、照明とこの作品に携わる方々の質はとても満足のいくものでした。
台詞や歌詞がとても聞き取りやすい!音響に文句が生まれないのがこんなに快適だなんて!
だからこそ、アイアで上演されたのがすごく勿体無いんですよ……!
静かなシーンに雷の音が聞こえたり、ぽたぽたと雨漏れしているような音が集中力を削いでいく……!
至るところで言われておりますが、今後2.5次元ミュージカル専用劇場として運用していくならばまず劇場の作りをなんとかしてほしいなと思います。
作品に6800円払うのは惜しくないのですが、アイアにこのお値段かと考えると少し萎えてしまいます。
気になりキャスト
アンサンブルの方々のレベルが高い舞台は面白い!
蛇足ですが、以前『TARO』~俺たちが救う!!~でヒロインを演じられていた替地さんが今作ビアンカの侍女役でご出演されてたんですね……!
ビアンカがヴェネチアの縁談が決まった際の楽曲でマリエッラと一緒に歌っていた方かな……可愛いなと思っていたら他の作品で観た方だったときの衝撃と興奮……!
ビアンカ・カスターニ役唯月ふうかさん
前回と同様、主演は唯月ふうかさん。
2013年ビアンカは貴族令嬢であるビアンカ・カスターニと、身分を隠して男装し海賊ニコロとして生活していく演じ分けに少し違和感があったように覚えています。
しかし今回はその違和感なくビアンカらしさ、ニコロらしさが存分に感じられました。
また、主演の立場上、歌を披露する場面がほかのキャラクターに比べ圧倒的に多かった唯月さん。
声がとても好みなので、綺麗な歌声に耳が幸せになりました。
ずっと(唯月さん可愛いよ……!)と悶えながらの観劇でした。可愛いは正義。
お転婆さと貴族らしさを併せ持つヒロイン
ビアンカ・カスターニはカスターニ家の令嬢ながらも男勝りなお転婆さで弟ジュリオを追い回し、貴族らしくない振る舞いに乳母のマリエッラも手を焼く始末。
しかしジェノバでの謁見で着飾ったビアンカの振る舞いは貴族そのものでした。礼がとても美しい!
お嬢様らしくない登場でありながらも、公式の場では大貴族の一人娘にふさわしい物腰、態度、言葉遣いで育ちの良さを感じさせるビアンカ。
そんなビアンカの幼さと貴族らしさが同居する秀逸なシーンとしてシルバーと初めて出会う場面を挙げたいと思います。
慕うロレンツォをシルバーに散々に言われた後、「もう二度と会いません」と優雅な礼をするものの、背中を向けて数歩で我慢できずに地団太を踏み、駆け出しはけていくビアンカ。一度で二度美味しくビアンカを楽しめます。大人の対応をしようとするものの出来なかったビアンカがとても可愛いです。
海賊ニコロがただ一度ビアンカに戻るとき
カスターニを捨て、ニコロとして生きていくビアンカは活発な少年そのもの。
しかしアルベルトの死に際、「あなたまでいなくなったら私はひとりぼっちになってしまいます!」とニコロの姿でありながら、ニコロではなくビアンカとして訴えます。
海賊になってから7年以上、アルベルトはおそらく10年近く唯一ニコロが“ビアンカ”だと知り、一番近くで支えてくれたかけがえのない存在。
大好きな人たちとこの空で繋がっている、とは言っても所詮は目に見えない絆。相手の様子も知り得ないために心細かったに違いありません。
けれどもアルベルトだけが正体を知り、傍で支えてくれる。
むしろ10年近くこの状態でどうしてビアンカとアルベルトが恋仲にならなかったのか不思議なくらいです。
人目を憚らず、ニコロの姿でありながらもビアンカとしてアルベルトを看取る姿は涙なしでは観られませんでした。
アルベルト役原嶋元久さん
アイアにもの申したばかりですが、原嶋さんがご出演されるアイア作品は好きな系統のものばかりなので期待して臨んでます!!
気になりキャストで名前を挙げたものの、個人的にはとても消化不良……!アルベルトの本心がわからない……!
一番気になっているのが、どのタイミングで師匠であるビセンテ、忠誠を誓うべきスペインを裏切る決意をしたのかという点。
護衛についてすぐ、侍女たちの「お前はもう下がりなさい!」との一喝に対するアルベルトの「私にはお気になさらず」の声色からは、ビアンカ護衛はあくまで任務として行っている感が否めかったんですよね。
カスターニ家炎上のところでは既にビアンカと命を共にしようと決意していたと見受けられますが、そのキッカケというかターニングポイントを知りたい……!
というか、よくよく考えてみればアルベルトは感情表現豊かではないですし、それこそ陶器のような青年だったので、その点を考慮すると初期ベルトは変化がわからなくて当然なんでしょうか。
アルベルトのビアンカに対する振舞い方、感情の表れ方が令嬢の護衛時代、海賊仲間入り時代、ドレスをビアンカに手渡す場面、死の間際と確実に変化しています。生きる理由を見つけて次第に人間らしくなっていったんですね……!
シルバー役根本正勝さん
キャスト一新した今作ですが、前作にも根本さんはご出演されています。
しかし前回、私が観劇した際はジェノバの大使役でのご出演。そして今回、役柄が変わっての再演「女海賊ビアンカ」です。
シルバーはビアンカの婚約者、ロレンツォの腹違いの兄弟。
義弟の婚約をこっそり見届けようとジェノバを訪れた際、ビアンカと出会います。
ビアンカからの印象は「最悪」の一言で終わってしまいそうな様子で別れますが、ビアンカがニコロとして生き始めてから再会。
勿論初めは、あの恋に恋するような夢見る令嬢が男装をし海賊の仲間入りをした、なんて思いもよらないんですよね。
キャプテンキッド曰く、「昔のお前にそっくりだ」と言われる存在であったシルバーとニコロ。
それだけではない違和感を燻られながらも、シルバーはニコロを気にかけていました。
あるとき、ニコロが落とした袋の中身がロレンツォからビアンカにプレゼントされた紋章入りの指輪だったのを見てしまったとき、彼の中の違和感が核心となって繋がります。
ニコロがビアンカだと気付いてしまった際の複雑そうな表情といったら……!気付いてすっきりできない答え合わせをした気持ち!
私今作のシルバー、ロレンツォ、アルベルトと三者の中ではシルバーが1番好きです……!
初対面の意地が悪い感じもとても好きですし、実は義理堅くしっかりものである海賊副首領の姿、恋心をそっと一夜限りのダンスに託す語り口調……クライマックスシーンは勿論ですが、しっかりした人が見せる楽しそうな様子と恋に戸惑うギャップが好き……好きです……。
ビアンカを恋慕う三者の関係
ロレンツォ、アルベルト、シルバーと三者から恋慕されるビアンカ。
恋を知らないビアンカの初恋は無情にも戦略結婚。その相手がロレンツォでした。
カスターニ家失脚の陰謀のためにビアンカの護衛になったアルベルト。
正体を知りながらも仲間の海賊の一人として振る舞い、陰から支えるシルバー。
この作品は「どんなことがあっても生き抜け」をテーマに置いています。
何度も繰り返し観客に伝えられるテーマなので言及すべきかなと思いましたが恋愛の方が印象的でした。
備忘録的にビアンカと其々の関係での好きなシーンをご紹介。
アルベルトからビアンカにドレスを手渡す場面
ロレンツォが乗船していた船が襲われていたのを助けた後、ビアンカ達の海賊一味はロレンツォより宴に招待されます。
そんな折、アルベルトから「ビアンカ様に、」と煌びやかなドレスが手渡されます。
この場面のアルベルト、すごく泣きそうな顔をしているんですよね……!
そんなアルベルトの表情には気付かず、ビアンカは喜び、「ありがとうアルベルト!」と頬にキスをします。
あああ、違うんだ違うんだ……!ドレスはシルバーが用意したんだ……!
シルバーが用意したドレスを着てロレンツォのところに向かうビアンカを後押しすることを自分の感情を押し殺して選んだ切なさが堪らなくツラい……!
ドレスを手渡さない選択肢もあったはずなのに、ビアンカを喜ばせたい一心なんですよね……なんという男前……。
だって、想い人が他の男からのプレゼントを他の男の元に着ていくのを喜ぶ男が何処にいようか……!こう書くとビアンカなんという悪女ですか!笑
アルベルトからビアンカへ恋心が伝わっていない切なさと、応援することを選びながらも悲痛な表情を浮かべるアルベルトのこちらのシーン。ビアンカに感情移入すると積年の願いが叶う喜びに溢れて観れますが、アルベルトの立場を考えるととてもツラい……!
シルバーからビアンカにダンスを申し込む場面
全てを知っているシルバーがその夜だけはビアンカを女性として扱い、ダンスを申し込みます。
「セニョリーナ、私と一曲、踊っていただけませんか」
この一言で私の心全て持っていかれましたからね……!
シルバーというか根本さん、単純に顔も声もドストライクで、なんで私はビアンカじゃないのかな??と思いながらダンスシーンを観ていました。
シルバーが昔出会った女性の話って確実にビアンカのことじゃないですか……!というかこのシーン、そもそもビアンカは相手がシルバーだと分かった上で踊っているんです……!?
シルバーこそ、普段は同じ海賊の一味で近い立場にあるはずなのに、ビアンカ本人からは正体を知らされていません。
そのため、シルバーはニコルがビアンカだと知りながらも知らぬ振りをして接しています。
ビアンカに、とドレスを手渡すシルバーと受け取るアルベルトの間でどんなやり取りがあったのか……、想像するだけでおなかいっぱいです。
ロレンツォが過去の夢を見た、とビアンカへの想いを告白する場面
シルバーがビアンカと出会った際に言っていた、「(ロレンツォは)お前が好きなんじゃなくて、お前がヴェネチアの大貴族のご令嬢だから愛を囁いた。どんな娘でもジェノバのためなら誰にだってそのくらいするさ」のニュアンスの言葉を私信じていたんですよね……。
なので「ロレンツォはビアンカのことを本心で愛していなかったのではないか?」と疑問を抱きながらダンスシーンを観終えたわけです。ほら、ロレンツォ様ったら指輪を見ても思い出されなかったし、既にお后様いらっしゃいますし!
しかし、甲板でジェノバの大使に打ち明けるシーンこそ、ロレンツォの本心なんだなぁ、と。
ビアンカにとってロレンツォが初恋だったように、ロレンツォにとってもビアンカが初恋だったなんて……!ずっと疑っててごめんなさいロレンツォ様!最後のシーンでの甘酸っぱさをありがとうございます!
話が脱線しますが、今作、神永さん目当てで足を運ばれた方々にとって神永さんの出番が多いわけではないのでその点では少し不満かもしれません。
しかし、舞台上で時が流れるので、貴重なヒゲ永さんも観れます。会場内で周りのお姉さまが「ヒゲ永カッコよかった!」と言っていたのでミドル神永くんを味わいたいなら一見の価値ありです。
まとめ
元々「ガラスの仮面」が大好きなのできっとキャストに関わらず観に行ったであろう今作品。
ガラスの仮面を知っていても知らなくても舞台作品として気持ちよく楽しめる、とてもレベルの高いものでした。
中世ヨーロッパを舞台に繰り広げられるビアンカの波乱万丈な生き様、そして彼女を取り巻く人間模様……。
原作では物語を詳しく描くというよりかは、観客の反応をメインとした描写でしたので、改めてこの「女海賊ビアンカ」を楽しませていただく機会を作っていただいたこと、関わる方々に感謝するばかりです。
折角ガラスの仮面劇場と銘打っているので、今後も続いていけばいいのになと思います。
「ふたりの王女」や「ジーナと5つの青いつぼ」なんかね!是非観たいですよね!
近年では2.5次元ミュージカルとして漫画アニメの舞台化が多いですが、中々劇中劇を舞台化ってないですものね……!
ガラスの仮面の一ファンとして、今後の劇中劇舞台化を心待ちにしています!
公演概要
美内すずえ×ガラスの仮面劇場「女海賊ビアンカ」
2015年9月9日(水)~13日(日)@東京:AiiA 2.5 Theater Tokyo
スタッフ
原作/脚本:美内すずえ
演出/上演台本:児玉明子
キャスト
ビアンカ・カスターニ役:唯月ふうか
シルバー役:根本正勝
ロレンツォ役:神永圭佑
アルベルト役:原嶋元久
レオノーラ役:大沢逸美
カスターニ公爵役:三田村賢二
マリエッラ役:美郷真也
ジュリオ役:小西成弥
キャプテンキッド役:市山貴章
ビセンテ役:藤田 玲
ジェノバの大使役:吉岡 佑
マホメット役:寺山武志
アリ役:高橋里央
バルバロス役:北村 毅
ウッズ役:堀部佑介
ビアンカの侍女役:替地桃子
ビアンカの侍女役:山田美緒
ルチア役:佐々木もよこ
大岩主弥 / 山口侑佑 / 田中大地 / 高士幸也 / 成富健太 / 中山フラビオ一秋 /
伊藤 慧 / 廣瀬湧也 / 福島悠介 / 及川崇治 /
明日香 / 新橋 和 / 太田ふみ / 奈良里美 / 大崎朱音 / 高木真緒 / 山崎涼子 / 榊原萌
ストーリー
「ガラスの仮面」の劇中劇 「女海賊ビアンカ」が、キャストを新たに帰って来る
イタリア西部。地中海でジェノバ海軍によって捕らえられた海賊船。
船上で行われていた裁判の途中、海賊の中に男の格好をした女が見つかった。
彼女の名前はビアンカ・カスターニ。
ジェノバとは敵対する大貴族の一員だった…。
彼女は和平を結ぶため、ジェノバに嫁に来たのだった。
しかし、結婚を反対する者からの邪魔により彼女は追われる身となる…。
逃げる船上で、海賊に襲われたビアンカは捕らえられ、海賊の一味となってしまったのであった。
(公式サイトより引用)
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