渋谷のギャラリー・ルデコの5階で上演されておりました、くちびるの会第一弾公演の『旅人と門』観劇して参りました。
こちら観に行ったのが26日土曜日の夜公演でしたので感想、レポートが上演期間に間に合いませんでした。なんてこった。
第一弾公演とのことなので、第二弾公演にも期待しながら感想とレポートです。
※いつも通りネタバレ含みます。
感想
最初に宣伝
さて、日を置いたので思い出せない箇所が多くてとても無念!!
と思ったら『旅人と門』の脚本が注文販売されてました!うわーい!
くちびるの会公式ブログ
実際に演じる側でないと中々脚本って手に入らないですよね!
難しい作品だったので、文字で見直すことが出来るの本当に有り難いです……。そして何度も読み返してます。
脚本だけでも面白い作品ですので、くちびるの会にご興味ございましたら是非!
以下、脚本到着後に加筆した感想になります!
言葉遊びが心地いい反面、難しい
今回、この「くちびるの会」旗揚げ公演で思ったのは、「本気で理解して楽しみたかったら最低2回は行かなきゃダメだな……」ということでした。
脚本も会場販売されておりましたが、残り2公演の26日土曜日に行った時点で既に売り切れておりました。
理想としましては上演すぐに観に行き、脚本購入、数回読み込んでからの終演間近でもう1回、でしょうか。
この記事を書くに当たり、他の方の感想ブログなども拝見させていただいているのですが、
「あっあれそういうことか!!」
と自分では気付かないことに気付かされることがしばしば。
自力で「これはこういうことでしょうなるほどな」と納得しながら観劇してみたいものです。
言葉遊び「屁の河童」
進化を遂げた河童たちは、人間世界に暮らす子供たちの荒唐無稽な夢のエネルギーで生活しています。
夜な夜な子供たちの夢を盗んでは、醤油チュルチュル(灯油ポンプ)を通して“理屈”に変えています。
子供の夢は“屁理屈”。
“理屈”はこねられてレンガにされ、河童たちは休む間もなくそのレンガを積み重ねて壁を造ります。
このシーンだけでも「理屈をこねる」と「理屈を並べる」の二つ、ことわざで使われる言い回しが込められています。
“理屈”、そして残った“屁”の単語。
ここで“屁”、“河童”の単語が繋がって、“屁の河童”の諺が浮かび上がるわけです。
脚本読むまで「理屈をこねる」の言い回しには全く気が付きませんでした……!
日本語の面白さを再認識すると共に、脚本の言葉の選択が凄く工夫されていることに気が付かされます。
言葉遊び「藻」
河童三人衆のひとり、ダーウィンが陰で裏切りをしていることがバレるシーン。
フロイトは言います。
「合理的な理由をたぐり寄せたその先に、どうして「も」そうでないといけない、抜き差しならぬ事情が浮かび上がる。」
この後、ダーウィンが「煉瓦の様子を見てきます」と申し出、フロイトから理由を聞かれた時に答える台詞。
「どうしても……」
『不合理な理由説明が「藻」となって、後ろ暗い者に絡みつく』、フロイトの言葉が如実に表れています。
「藻」と聞くと頭にクエスチョンマークを浮かべてしまいそうですが、親が子供の駄々をたしなめるシーンを想像していただければわかりやすいかと。
「お母さんこれ買ってよー!」
「だめって言ってるでしょ!」
「なんでなんでー!」
「なんでも!ほら、行くわよ!」
みたいな。
「なんでも」「どうしても」は自分が問われた側に回った際に、問う側への理由説明が面倒な場合や説明するまでもない場合に利用しませんか。私の説明でわかりますか。
今作品での「藻」とは、この「どうしても」の“も”が具現化したものです。
さて、この「藻」の表現と人物関係、面白いのはここからでした。
フロイトは河童三人衆の上司ですが、彼もまた、藻に捉われている河童の一人。
囲っている未知に対して「どうして?」と問われた際に「どうしても」と。しかもこのやり取り2回あるんですよね。
自分の言った台詞がそのまま自分に跳ね返ってきているんです。
フロイトさん、不合理な理由説明になってますよ!後ろ暗い者になっちゃってますよ!
散々言って終わりではなく、その言葉が自らにも当てはまる、見事なブーメラン。
最近そんなフロイトのような方をリアルで見ていたので、その方をフロイトと重ね合わせながら観劇してしまいました。
言葉と行動が合わないとお城は崩れてしまいますよ!!
席によって変わる世界
この『旅人と門』ですが、席によって見える景色が大分変わってきそうでした。
『旅人と門』、ルデコでの席配置ですが、普通の劇場のようにステージと客席くっきり分かれているわけではなく、ステージに若干食い込み気味で客席がコの字配置されてましたので、客席によって役者さんの表情が見えたり見えなかったりする箇所がありました。
自由席だったので早めにいけば行くほど思い通りの席を確保できるのですが、1回観てみないことにはどの席がベストポジションか分からないですものね。
今回私はセンターブロック前列下手の通路横を陣取ったのですが、この席は河童たちがトイレ移動で使うための捌け用通路横のポジションでもありました。
舞台ステージと座席に段差も一切ないですし、横を通られるのでより演者との近さを感じて個人的には新鮮でした。
……けれどもですね、この席、近くに小山まりあさんほとんど来られなかったんですよね!!!
「とんとんとん、」のおままごとシーンは上手ブロックがベストポジション。
全体的にこやまりさん上手側にいることが多かったように思えます。
気になりキャスト
個人的な話になりますが、河童三人衆のひとり、アインシュタイン役を演じていた小島明之さんの顔や演技が凄く好みでした。
未知子役小山まりあさん
主人公哲くんの幼馴染。
哲くんとはよくおままごとをして遊んでいました。
おままごとの料理の味を哲くんに無言の目力で詰め寄るシーンに思わず笑ってしまいました。流石こやまりさん。
ストーリー全部無視した感想ですと、5歳児こやまりさんのひらひらなワンピース姿がすごく可愛かったです。
また、「とんとんとん、」とおままごとのまな板と包丁の音を表現した台詞。
この台詞が2場面あるのですが、1回目は「こやまりさん可愛い!5歳児!神様って不公平!」と思ったものですが、2回目はその直前シーンの空気が重かったがために、変化がないことに対する安心感を覚えて泣きそうになってしまいました。
自分でもついていけないほどの変化に困惑する哲の、唯一変わらない存在である未知子ちゃん。
変わらない未知子ちゃん、そして「未知」。
哲くん、そして自分の正体に気付いた彼との関係や、置かれた環境によって変わる彼女の心情が凄く素敵に演じられてました。やっぱりこやまりさん好き……。
本当なんて、美味しいだけでちっとも退屈。
ままごとの料理の味を聞かれた哲くんがその味を答えられず、美知子ちゃんに怒られながら想像力の舌を伸ばしてその料理を味わいます。
「君の作った空想の手料理は、こんな思い出を秘めていたんだね」との哲くんに対しての美知子ちゃんの台詞。
この台詞が『旅人と門』の中で一番好きで、一番印象に残りました。
ままごとの料理の味で考えるとぴんとこないかもしれませんが、現実で考えると納得しやすいのかな、と。
社会人になると、現実で働かないとお金が貰えませんが、それって楽しいことなのでしょうか。
人によっては「仕事がとても楽しい!」という方もいらっしゃるとは思いますが、実際そうではない人が大多数ではないでしょうか。
“本当なんて、美味しいだけでちっとも退屈。”
生きていく上で必要なことは、ちっとも退屈です。
逆に舞台観に行ったり漫画を読んだり夢小説を読むことは、きっと生きる上で必要ではありません。
でも私の人生をちっとも退屈にしないために、楽しい人生を送るために必要なことだとは思うんです。
こやまりさん情報宣伝
2014年11月6日から11月9日、中野・テアトルBONBONで劇団鋼鉄村松の「ロケットマン」に出演されるそうです!
現在公式サイトの出演者のところにまだお名前ないようですが、「出ます!」とのこと!
楽しみ!
母役宮﨑優里さん
主人公の哲、そして哲の夢を盗んだ河童たちと同じ国に暮らす河童のプラトンの母。
堀晃大さんと共に哲、プラトン両名の両親を演じていました。
最初は人間世界を中心に話が進みますが、後半は河童の世界が中心。
緑のカーディガンを羽織ると途端に人間から河童の母に自然に成ることに舞台の面白さを感じますね!
良い言葉が中々見つからないんですけど、演技というより「どこにでもいるお母さん」感が凄く感じられました。
こう、演技演技してるお母さん役じゃないんですよね!
自然体にその役として生きているというか。
息子を心配するところがまさに「母」!
どこにでもいるお母さんのよう、というとそんなに凄さはないようですが、舞台の上でわざとらしさなく自然に振舞うって、単純ですけどやっぱりそれは凄いことだと思うんです。
宮﨑優里さん演じる「母」、役柄的にも何かしらの使命が与えられている、とかではないんですけど、ルデコに展開する『旅人と門』の世界、そして私たちが生活するこの日常の狭間に一番馴染んでいた印象を受けました。
人の想像力を頼りにし、生きる可能性を信じて。
くちびるの会公式サイトで、演出の山本タカさんよりこんな言葉が寄せられていました。
ひとつ、この「~かもしれない」力を頼りに芝居を打とうと思う。小細工は一切排除して、舞台を極力シンプルに。人の想像力を頼りにし、生きる可能性を信じて。
役者さんとの距離が最近見たお芝居の中では圧倒的に近く、そして舞台セットがほとんどない舞台でした。
それでも今どんな場面にいるのか、どんな装置があるのか、場面の光景がそれぞれの想像力に任される感覚。
もしこの『旅人と門』、10人の人が見ていたならば、10人の描く光景が全て違うものだったに違いありません。
トイレに籠った哲くんを心配してお母さんがトイレの扉を叩くシーン、どんな扉だったのか、
河童の世界に繋がる哲くん宅のトイレは洋式か、和式か。
ちょっとしたところの細かな説明がされないために、思い浮かべる風景が様々で、同じ情景はひとつとしてないことでしょう。
まるでジブリ映画を見ているような世界観で、その言葉遊びが役者さんの台詞に自然に乗せられた舞台でした。
今回「くちびるの会」の旗揚げ公演でしたので、今後の「くちびるの会」の世界観により期待していきたいです。
公演概要
くちびるの会第一弾公演『旅人と門』
2014年7月23日(水)~27日(日)@東京:Gallery LE DECO
スタッフ
作・演出:山本タカ
キャスト
小島明之(カムヰヤッセン) / 小山まりあ / 佐藤修作(四次元ボックス) /
東澤有香 / 根津弥生(机上風景) / 廣瀬 瞬 /
堀 晃大(3days) / 丸山港都 / 宮﨑優里(TILT)
ストーリー
「昔話に聞いたんだ、
あの門を抜け東に旅すれば、そこに三つ目の太陽がある!」―ある日、俺の夢が盗まれた。
昨日まで幼心を抱えた五歳の俺は、気がつけば借金まみれの二十五歳。
一体これはどうしたことだ。
盗まれたのは夢ばかりではない、恋人の歌まで盗まれた。
長い長い眠れぬ夜を越え、妄想が現に盗みいった折りも折り、俺の夢枕に立ったのは、頭に皿、湿った皮膚に、黄色い嘴の河童三匹。
醤油ちゅるちゅるとドラム缶を抱えた奴らを、俺は、便所の果てまで追って行く!
(「くちびるの会」公式フェイスブックページより引用)